前研究室では、深く取り組む4つのテーマをかかげています。なぜこうしたテーマが大事と考えるのか、その背景を少し解説しておきます。

前研究室の研究テーマは「2050年を目標に日本でみんなが健康・快適にゼロエネ・ゼロエミッションで暮らせる社会の実現に役立つ住宅の技術・設計手法の開発」です。(ちなみに2040年は前が65歳になります。)現在の技術を踏まえつつ、将来必要になる技術や設計手法に取り組みます。

 

地球温暖化防止のため、日本は2050年までにCO2排出量を80%削減する計画です。これは小手先の工夫では到底達成できる目標ではなく、社会全体の大きな改革が必要になります。合わせて日本の人口動態は急激な減少と高齢化が進む予定であり、居住環境の快適・健康の確保が今以上に重要になります。

 

エコハウスとか環境建築というとなにか特別な建物のような気がしますが、世の中に1軒エコハウスがあっても世の中はほとんど変わりません。日本中のすべての家がよくなってこそ、みんながエネルギーのことを心配せずに快適・健康に暮らせ、日本のエネルギー消費と輸入燃料が減り、世界の地球温暖化対策に貢献できるのです。日本のすべての家が十分な性能を備えることが肝心です。

 

CO2排出量(≒エネルギー消費量)で多いのは、産業・業務(オフィス)・運輸です。

考えてみれば、現在の「郊外居住・都心勤務」という形態は、ビル運用や交通における莫大なエネルギーでなりたっています。そもそも、すし詰めの遠距離通勤・タコ部屋でのオフィス勤務は、快適で幸福な生活とかけ離れています。働き方改革の影響もあり、今後は在宅勤務・テレワークが増え、1日の中心が住宅にシフトする可能性があります。そして、ビルのゼロエネ(ZEB)は非常に困難ですが、住宅のゼロエネ(ZEH)は比較的容易です。

 

ゼロエネルギー住宅(ZEH)は、「高断熱高気密」・「高効率設備」・「太陽光発電」による創エネの3点セットで、ゼロエネを達成しています。ZEHは急速に普及してきていますが、実は本当のゼロエネではありません。

 

ZEHは1年間を通しては消費エネ量=<創エネ量となるように設計されています。しかし、太陽光発電は春・夏はたくさん発電しますが、冬は発電量が減少します。一方で消費エネルギーは冬に主に暖房によって増加するため、冬は消費エネ量>>創エネ量となり、エネルギー消費過多(=赤字)となります。

 

ZEHでも冬に大きなエネルギー不足が起きてしまうと、結局は冬のためだけに大きな石炭発電所や原発を維持しなければならなくなります。これでは真の意味でゼロエネにはなりません。

 

冬にも消費エネ量<創エネ量を実現する真のゼロエネ住宅の実現のためには、太陽光発電だけでなく、窓や屋根で太陽の熱を集めることが必要になります。

太陽の熱だけで暖房を必要としない無暖房住宅の実現のためには、「十分な断熱」「太陽熱取得」「躯体の蓄熱・放熱」を活かした、より高性能な開口部・蓄熱部材の開発、そして丁寧な設計手法が必要になります。研究テーマのうち、「ダイレクトゲイン」「太陽熱活用システム」「BIMを活用した設計手法」はこれに該当します。

 

一方で、すでに日本に建っている既築の住宅の対策も重要です。新築で日本中の家が置き換わるのには長い時間が必要です。すでに建っている住宅ストックの改修が大きなテーマとなります。

家全体をフルリフォームできれば性能的には一番よいのですが、コストがかさむので出来る人が限られます。コスパがよく確実に快適で省エネな、部分リフォームの検討も重要になります。研究テーマの「既存住宅のリフォーム」では、多くの人が実施できるお手軽リフォームを主に研究しています。